「夜を乗り越える」又吉直樹 を読んだ感想

「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹氏が、幼少期から読んできた数々の本を通して、なぜ本を読むのか、文学の何がおもしろいのか、人間とは何かについて考えた本です。


私は、「火花」を読んでいないので、「火花」に関しては全くわかりませんが、又吉直樹氏はテレビでよく見かけていて、面白い芸人さんというイメージでした。


文学が好き、強豪サッカー部出身、実家は貧乏、髪型はツーブロック、ということは知っていて、興味がありました。(コントは見てない)


芥川賞受賞でかなりブレイクして、波に乗っているのは間違いない、そんな又吉直樹氏の新書は何が書いてあるのか気になったので、読みました。



内容は、幼少期の話から始まって、「火花」の執筆に至るまでの人生が書かれています。


幼い頃の又吉氏は、自分のことを明るい人間ではないと思っていました。しかし、まわりからは面白い人とか、明るい人間だと思われていました。常に誰かから指名を受けて、それを演じる役割だった。


なぜか喧嘩が強いやつとして扱われていて、助けを求められることもあった。でも、自分は喧嘩が強くない。でも、みんなの期待に答えなければならない。求められたらパフォーマンスをしなければいけない。でも喧嘩はしたくない。でもやらなければならない……。




まわりから求められるキャラクターと、自分のキャラクターの違いに葛藤していたようです。


これは、程度の違いはあれ、誰でも経験し得るものではないでしょうか。自分の望みとまわりの望みが一致するとは限らないですし、友達同士でも仕事でも、希望と現実が重なることはないのではないでしょうか。


現実を希望に近づけていく。それが、生きていくことなのではないかと思います。



ー僕が本を読んでいて、おもしろいなあ、この瞬間だなあと思うのは、普段からなんとなく感じている細かい感覚や自分の中で曖昧模糊としていた感情を、文章で的確に表現された時です。自分の感覚の確認。つまり共感です。ー


これは、すごく同意します。


自分と共感できる部分が1つでもあると、スラスラ文章が入ってきて、読書スピードも理解力も増します。


しかし、共感できる部分が見つからないと、つまらなくて、読みにくい本を苦しみながら読む、修行になります。


やっぱり、共感できる本がその人に合った本だと思います。



著者は、共感ばかりを求めていると、よくない。共感できないものをわかろうとする姿勢(視点を変える行為)は大切だと書いていました。


確かにそうだと思いますが、共感できないものを受け入れるのは苦痛ですし、余裕のある人しかできないことだと思います。少し、理想論すぎるのでは?と思いました。



本では他にも、又吉直樹氏の好きな本も載っていました。これから、読んでみようと思います。


又吉直樹氏のことを知ることができる本でした。