「自殺の心理学」高橋祥友 のまとめと感想

この本は自殺する人・自殺をする可能性のある人の心理を解説したもので、一般の方々に自殺の危険とその予防についての正しい知識を持ってもらうために書かれている。


内容のまとめ


(正確なデータはないが)少なく見積もっても自殺未遂者は自殺者の10倍いる


自殺の危険の高い人が、いつも抑うつ的であるとは限らない


社会的に孤立している人は、そうでない人に比べて自殺の危険が高い


専門職についている女性は専業主婦より自殺率が高い


実際に死ぬ危険が低い方法で自殺を図った人(手首を浅く切る、薬を数錠余分に飲む)でも、その後、自殺によって生命を失う危険は高い


家族や知人は、自殺未遂者の死の意図を頑なに打ち消そうとする傾向が強い(医療関係者もその傾向は多少ある)


ほとんどの場合、複雑な準備状態が長年にわたって固定していき、些細なきっかけによって自殺する。


自殺は、環境・性格傾向・他者の死・生物学的因子・精神疾患などの原因が複雑に絡み合って生ずるものである。青少年の自殺の原因をすぐ「いじめ」と短絡的に考えるのは、問題の本質を見失っている。


群発自殺は青少年の、1〜5%を占めるという報告がある



【うつ病に関して知っておくべきこと】


薬が効果を現すまでには時間がかかる


服薬の方法は医師の指示に従う


受診先を転々と替えるのは避ける


薬の名前と量を知っておく


薬の副作用がまったく出ないのは理想であるが、いつもそれが期待できるわけではない


精神科医との相談は大事







1997年の本なので、古いデータが使われているところもありました。しかし、自殺についての基本的な知識を得るには十分な内容でした。


自殺未遂者が自殺者の10倍いるとされているのは驚きました。この数字は現在も有効のようです。

日本財団 自殺意識調査2016↓
http://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2016/102.html


本の中で自殺者は女性より男性が多い、自殺未遂者は男性より女性が多い、と書いてありました。理由はよくわかりません。


子どもを産むので、男性より女性は生命力が強い、とかあるのかもしれません。(適当な推測です)


専業主婦よりも専門職の女性は自殺率が高いので、働いている人は働いていない人より自殺率が高くなるのでしょう。最近は女性の社会進出が進んでいるので、女性の自殺率も高くなっていくのかもしれません。


青少年の自殺を全ていじめと考えるのは良くないと書いてあり、反省しました。私も、青少年の自殺=いじめが原因と短絡的に考えていました。確かに、まわりの大人との関係、精神的な強さ、性格など、考えなければいけない要因を無視していました。これからは青少年の自殺報道は「いじめが原因」以外の要素に注目しようと思います。



本では、自殺未遂をおこなった少年から高齢者までの実例を紹介したり、自殺の要因について詳しい解説が書いてあります。


古めの本ですが、基本的な自殺について学べる本でした。





「自殺の心理学」(講談社現代新書)高橋祥友