「超闘 死刑囚伝」丸山友岐子 を読んだ感想

堀江貴文氏の「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った」でオススメ本として紹介されていたので、読みました。


面白い本でした。


人を2人殺した孫斗八が、死刑を免れるために奮闘するノンフィクションで、とにかく、エネルギーがすごい。


孫は裁判で死刑を言い渡されるのだが、そのとき、法廷で裁判長をにらみつけ「キサマはそれでも人間か!」と怒鳴りつけ、監房に帰って長々と抗議文を書く。


自分が死刑になるはずがない、死刑にしようとするお前等が間違っている、俺は騙されている、などと滅茶苦茶な主張をする。


孫は、看守たちが受刑者に乱暴な言葉をつかうたびに「もっと人間らしくものをいえ!」と怒鳴りつける。しばらくして、六法全書を読み込み、職権濫用罪で片っ端から監獄職員を告訴し始める。


看守を「キサマら、それでも公務員か!」と罵倒するのは朝飯前で、毎日看守とひと悶着起こす。孫の行動を少しでも注意しようものなら、長広舌のお説教と告訴で仕返しされる。


言葉でいったら、孫にかなう職員はいないので、告訴された看守たちは痛々しいくらいしょげ返り、遠慮してものをいうようになる。


機嫌のいいときには説教をたれ、機嫌の悪いときには頭ごなしに罵倒される。


所長や管理部長にも、口汚く罵倒した意見書や覚書を書き送り、担当看守に泣きべそをかかせる。



まことに、滅茶苦茶である。



自ら自分自身の弁護人となって、何度も死刑執行停止をとりつけて、世界の話題になる。最終的には、死刑が執行されるが、執行時、だまし打ちにするのか!と叫んでいたという。



本当に、滅茶苦茶である。


ただ、ものすごくエネルギッシュである。


本書は、孫のことに興味を持って、何度も面会をしたジャーナリスト(丸山友岐子)が書いたものである。彼女は死刑反対論者で、彼の死に同意しない、と書いている。しかし、彼のことを好きになることができなかった、とも書いている。


2人も人を殺しながら、獄中の人権を声高に主張する囚人さまを好きになることができなかった。と書いていて、私個人も同感である。


読んでいて、とにかく主張が激しくて、かなりの熱量を持った人だな、と思いました。が、人を2人殺しておいて、こんな主張をし続ける精神は、全く共感できませんし、助けたいとも思いませんでした。


それでも、読み物としてはとても面白く、孫の力によって、監獄の中の世界が変わったり、世間の目が変わったりする様は、読んでいて痛快でした。


57ページに、

監獄行政にかかる費用の98%までは刑務所の既決囚が稼ぎ出した金でまかなわれているのである。囚人は自分の働きで、監視の監獄職員の給料から拘置所長や刑務所長の月給はもちろん、未決囚の食いぶちまで稼ぎ出しているのである。

と書いてありましたが、現在はどうなのでしょうか?とても気になりました。(ググってみたけど、よくわからなかった)


調べてみて何か分かったら、書こうと思います。



滅茶苦茶な死刑囚の、生への執着を感じられる、面白い本でした。


超闘(スーパー) 死刑囚伝―孫斗八の生涯 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)

超闘(スーパー) 死刑囚伝―孫斗八の生涯 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)