「つくられる偽りの記憶」(化学同人)越智啓太

おもしろい本でした。人がフォールスメモリー(偽りの記憶)をつくり出す現象を、様々な心理学の実験から論じた内容でした。


気になったところを勝手に引用します。

  • アメリカのイノセンスプロジェクトという、"DNA鑑定を行って真犯人を確かめる調査"によると、「実際には無実の人」が捕まったケースでもっとも多いのは「目撃証言の誤り」だった。
  • "弟や妹が生まれたときの事柄をどのくらい記憶しているか"についての調査によって、人間のもっとも古い記憶は三歳程度であると結論づけられた。
  • 知識などの「意味記憶」、自転車の乗り方や料理の仕方などの「手続き記憶」は胎児のころから存在しているが、「エピソード記憶」は三歳頃までしか遡れない。
  • 出生児記憶を想起する人は、はじめから出生時の記憶があることを固く信じており、催眠によってそれを思い出すことができると考えている人が多い。
  • 前世の記憶を語るものの多くは、以前読んだ本の内容語っているだけ。
  • 映画「未知との遭遇」が放映されたあと、"エイリアンに誘拐された"と言う人が急増した。一方、"UFOだけを見た"と言う人は急減した。
  • お年寄りは、社会情緒選択理論のいうとおり、過去の記憶をポジティブにバイアスをかけて想起してしまっている。若者がけしからんというのは、昔からある。
  • 記憶は、貯蔵庫・アルバムのようなものではなく、もっと「やわらかいもの」


本の中で映画「インセプション」についての記述がありました。

記憶の埋め込みといったアイディアを描いた映画は、何本かつくられていましたが、これらの映画ではいずれも単に脳内に記憶痕跡を残せばよいという描写に終始していました。「インセプション」のアイディアのすごいところは、単に記憶痕跡を埋め込むだけでなく、それを制御する過程も重要であるという記憶研究の最先端の知識も、巧みに取り入れているところなのです。


私も「インセプション」は好きです。すでに3回見ています。ストーリーも好きですし、街が動くCGも好きです。メイキングで道路に電車を走らせる方法を解説していて、おもしろいなぁ〜と思いました。



本に書いてあった「記憶はやわらかいもの」というのは興味深かったです。人間の記憶は曖昧なので、話半分で聞くのがいいですね。