「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」二宮敦人 を読んだ感想


書評サイトHONZでオススメ本と評価されていたので読みました。本の帯を見ると、全国書店で売り上げ1位続出!と書いてあるので全国的にかなり売れているのだと思います。


読んでみた感想は、評判通り面白かったです。




本は、著者の奥様が藝大生という話から始まる。

著者は作家なので、原稿を書いている。その横で妻はノミに金槌を振り下ろしている。


普通の人が、ノミに金槌を振り下ろすことは一生ないだろう。ただ、藝大の彫刻科に籍を置く者であればそれは普通のことだろう。木彫りの陸亀を作っている藝大生。これは、想像できる。




次の場面で、著者の妻は体中に半紙を貼る。


体中に半紙を貼る人間がこの世にいることを想像したことがあるだろうか。おそらく、ない。

著者の妻は、大学の課題で自身の彫刻を作るらしい。そのために半紙で型をとっていたそうだ。この時点で、カオスを感じる。


次の場面で、著者の妻はノミを作る。

彫刻を作っていると思ったら、彫刻を作るための道具を作っていた。元となる既製品の先端を叩き、形を整え、焼きを入れるなどして、自分用のノミを作り上げる。道具はどこかで購入してきて終わり、ではないらしい。


芸術にこだわると、道具から作るんですね。驚きました。



次の場面で、著者は台所で缶詰を見つける。

しかし、缶詰の正体はガスマスクだった。

RPGにでてきそうなトラップである。

彫刻科では木や金属、粘土の他に樹脂を扱う授業がある。樹脂加工の際には有毒ガスが発生するので、学生はみなガスマスクを購入するそうだ。著者が「どこで買うの?」と質問すると、「生協」という答え

藝大の生協にはガスマスクが売っている!

カオス!

それ以来著者は気になり、藝大について調べるようになる。



ここまで、あらすじの内容なのですがとても面白いです。本編に入る前の段階で、この面白さ。




本編に入ると、ホームレスがキャンパス内にいる。という話から始まります。ダンボールハウスがあり、ホームレスが住み着いている。お菓子を置きっぱなしにするといくつか取られるらしい。

いきなりのカオス。

藝大は音楽系の音校と美術系の美校に別れていて、学生の見た目が全く違う。音校は整った格好をしているが、美校は外見に気を使っていない。数分も眺めていれば、歩いてくる学生が音校と美校のどちらに入っていくか、わかるようになるらしい。

同じキャンパスの学生でも、専攻によって人間のタイプが違うようだ。


その後、上野動物園との逸話を聞いたり、意外と藝大生は庶民的という話を聞いたり、なぜだかわからないけどモノづくりをしてしまう話を聞いたり、工芸科では何かとピザを焼く話を聞いたり……とにかくカオスばかりである。




只者ではない藝大生のストーリーが詰まった本です。


オススメです。