人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書) 松尾 豊

とても人気らしいので読んでみました。

引用と感想

人工知能が人間を支配するなどという話は笑い話にすぎない。

いまの人工知能は、実力より期待感のほうがはるかに大きくなっている。


実際にできること、これからできそうなこと、これからできるかもしれないが夢物語のようなこと、がごっちゃになってしまっているのが現状だそうです。




〈レベル1〉単純な制御プログラムを「人工知能」と称している
エアコンや掃除機、洗濯機、最近では電動シェーバーに至るまで、世間には「人工知能」を名乗る商品があふれている。こういった技術は、「制御工学」や「システム工学」という名前ですでに長い歴史のある分野であり、これらを人工知能と称するのは、その分野の研究者や技術にも若干失礼だと思う。


〈レベル2〉古典的な人工知能
将棋のプログラムや掃除ロボット、あるいは質問に答える人工知能などが対応する。


〈レベル3〉機械学習を取り入れた人工知能
検索エンジンに内蔵されていたり、ビッグデータをもとに自動的に判断したりするような人工知能である。


〈レベル4〉ディープラーニングを取り入れた人工知能
機械学習をする際のデータを表すために使われる変数(特徴量と呼ばれる)自体を学習するもの。




言われたことだけをこなすレベル1はアルバイト、たくさんのルールを理解し判断するレベル2は一般社員、決められたチェック項目に従って業務をよくしていくレベル3は課長クラス、チェック項目まで自分で発見するレベル4がマネジャークラス、という言い方もできるだろうか。 みなさんも、ニュースや製品情報に出てくる「人工知能」や「AI」が、この4つのうちのどのレベルを指しているか、考えてみると面白いかもしれない。

この分類はとても分かりやすかったです。



囲碁は、将棋よりもさらに盤面の組み合わせが膨大になるので、人工知能が人間に追いつくにはまだしばらく時間がかかりそうだ。

2016年の3月に勝ちました。この予測は誤りだったようです。(この本の発売日は2015年3月)


iPhoneにはSiriという音声対話システムが入っている。その反応が面白いと話題になり、Siriに「愛している」「結婚して」と話しかける人が続出したが、イライザはテキストベースでもう50年も前にその原型を実現していたのだ。(もちろんSiriには、その後に脈々と続く対話システムの研究成果がたくさん取り入れられている。2000 年代、スタンフォード大学をはじめ、米国のたくさんの大学が連携したCALOというプロジェクトの成果がベースになっている。)


技術の雛形はあったけれど、最近になるまで一般人が利用することがなかったということですね。


民事裁判、特に離婚や相続でもめている案件については、情緒的な面を含めて、当事者の利害関係を調整するという面があり、人間が得意なところかもしれない。「あなたの主張が法廷で通る確率は5%だ」と機械に言われるよりも、人の顔を見て話して納得 したい人は少なくないはずだ。

やはり、人とのコミュニケーションの部分は人工知能で代替するのが難しい分野のようです。あと、「非常に大局的でサンプル数の少ない、難しい判断を伴う業務」(経営者や事業の責任者)の仕事も人工知能には難しいようです。



シンギュラリティで議論されているような「真に自己を設計できる人工知能」の実現は遠く、現在のところ、その糸口さえもつかめていない。それが技術の現状である。


シンギュラリティに悩むくらいなら、日々の生活の不安に悩むほうがよさそうです。

そもそも、シンギュラリティは本当に来るのでしょうか。仮に来たとしても困るのは人間だけだと思うので、私にはどうでもいいです。人間が滅びて困るのは人間だけですから。私は人間が永く生き延びてほしいという願いがないので、シンギュラリティの話に興味がわきません。




YouTubeに著者の講演があったので貼っておきます

【SoftBank World 2016】 人工知能は人間を超えるか 松尾 豊 氏

現在使用されている人工知能は、これまでの技術の積み重ねでできている

ディープラーニングの分野は大きな可能性を秘めている。投資対象である。

最後に


人工知能の、現状と理想と課題について理解が深まる本でした。ためになりました。