「美の構成学 バウハウスからフラクタルまで」(中公文庫)三井秀樹

著者は大学で「構成学」を教えている先生です。


「構成学」とは、あまねく造形に共通する原理で、ファッションセンス、インテリアコーディネートなど、身近な生活の美の基準を説く研究領域のことらしいです。


気になったところを勝手にまとめます。

 ヨハネス・イッテンはデザイン教育の第一段階として知識より経験を重んじ、デザイン教育の構成教育やベーシック・デザインの基盤をつくった。


 バウハウスがそれまでの美術学校(アカデミー)と一線を画すのは、芸術の才能は天武のものではなく、誰でも造形能力をもっているという前提に立った教育指導にのぞんだところ。


 バウハウスナチスの躍進によって14年目に終焉を迎え、イリノイ工科大学(IIT)マサチューセッツ工科大学(MIT)へ理念が引き継がれた。


 弥生式土器に描かれた渦紋や鋸歯紋にみられる幾何学紋の原始紋様は、地理的に隔離された世界各地の民族の土器や生活用具にもみられ、自然発生的に生まれたものと推定される。


 あらゆる民族で具象的な紋様が発生する以前に幾何学紋様が生まれ、装飾として用いられていた。


 黄金比1:1.618…は使いにくいので55:89をおぼえたほうがいい。


 構成的センスを身につけるには

  • よいものを見る
  • ブランドものを身につける
  • センスのよさを分析する

 構成学は芸術やデザインに関心のあるものが感性によって培って得た造形的なセンスの集大成であるため、構成教育を受けていなくともデザイナーになれる可能性がある。


 幼いときから絵が下手だったからとかデッサンが苦手だからデザインセンスがないのが当たり前と決め込んでいる人をよく見かけるが、とんでもない間違いで、実写による造形的センスとデザインセンスは共通している部分もあるが、実写だけでは得られない造形感覚がある。デザイン的スキルと実写的な造形力は別のもの。

本は様々なデザインの例が出てきて面白かったです。デザインの基本的な歴史と知識を得ることができました。中でも、錯視と色彩調和は面白かったです。

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ミューラー・リヤーの錯視:実際は等しい長さだが、付加図形の影響で異なる長さに見える。



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ツェルナーの錯視:斜線によって平行線が歪んで見える。



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カニッツァーの三角形:主観的輪郭(存在しないが、目が主観的に見てしまっている輪郭)の描く三角形が背景より白く見える。



類似調和:色環表で30度〜40度離れた色相の二色を基本とする配色。柔らかで落ち着いた色調となる。
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隣り合う2色同士が類似調和になります。




デザインの基本を学べる本です。



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錯視のカタログ