「誰もいない夜に咲く」桜木紫乃

ツイッターのTLで話題になっていたので、読みました。



この本は、7話の異なる作品が収録されている短編集になります。すべて北海道が舞台です。最初の作品だけ男性の主人公ですが、それ以外は女性の主人公となっています。





1話目「波に咲く」は、牧場で働く沢崎秀一と嫁になった中国人の花海の話です。日本語を話せない花海と子どもをつくろうとしない2人に苛立つ、秀一の父親謙三と母親のタツ子は、何とかして子どもを作らせようとする……。



最初の話が1番愛がこもっていると思いました。雪の冷たさや重さに負けない、暖かい愛を感じました。





3話目「プリズム」は、運送会社で事務をする寺西仁美と、同じ運送会社で働いていたが解雇された野口の話です。解雇に納得できない野口は何度も社長に直談判する。一日中事務所に粘り続ける生活を半月ものあいだ行い、元の仕事仲間は誰も声をかけない。生活に困った野口は仁美のヒモになる。そんな中、仁美は武田冬馬と知り合い親しい仲になる……。


この本の中で1番悲しい話ではないかと思います。どうしようもない野口と、野口から離れられない仁美の、苦しいつながりを感じました。





5話目「風の女」は、 28年間行方がわからなかった姉の死を知らされた沢木美津江が、姉の過去を知る寺田樹から話を聞くというストーリーです。この本の中で1番印象に残った文章がこの話の中にありました。



それは143ページの

時が経ち、最期まで両親の面倒をみた孝行娘と持ち上げられて、いつの間にか人生の収支が合ってしまった。一度太い線を引いてしまうと、そこから先の生活は無気力なものになる。再びなにかを始めるのは億劫なことだった。


です。

一度決められたことを覆すのは難しい。流されるままの人生は幸せなのかもしれないと思いました。


さらに、途中で樹が言った

「後悔でも傷でも、いいんです。色鮮やかな記憶がないと、自分が死んだことも気づかない一生になってしまう」


も印象に残っています。つらい人生を肯定してくれる、背中を押してくれる言葉だと思いました。





6話目の「絹日和」7話目の「根無草」はどちらも好きです。



「絹日和」は、安藤菜々子が元カレの嵯峨信樹の嫁の着付けをするという話です。女のいがみ合いを感じることができます。


「根無草」は記者の仕事をする叶田六花が、過去に縁のある古賀を取材するという話です。最後に面白い展開が待っています。





どの話も暗めの話でしたが、登場する女性達は皆、力強い人間ばかりでした。誰もが強く生きているのだなと思いました。



雪の冷たさを感じる愛の本でした。







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私ももらいました。
興味ある方は利用されるといいと思います。




「誰もいない夜に咲く」(角川文庫)桜木紫乃

誰もいない夜に咲く (角川文庫)