「ひきこもりはなぜ「治る」のか?」斎藤環 をひきこもりが読んでみた

ひきこもりの私が、ひきこもりの本を読んでみました。



著者は精神科医で、私の知る限り、ひきこもり治療に関して1番有名なお医者さんだと思います。



気になった箇所をまとめると


ひきこもりに対しては、人間関係そのものが治療的な意味をもちます。治療者が本人と安定した関係をもつこと自体に治療効果があるのです。だから、本人の言い分を頭ごなしに否定したり、叱ったり批判すべきではありません。


本の内容に基づいて作図した図1

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図1.コミュニケーション能力と欲求不満耐性



欧米では親子の結びつきが弱いので、ひきこもりの代わりにヤングホームレスが多い。


ひきこもりは「本人が元気になる」ことが目標であって「早く社会復帰させる」ことはその次


ニートは経済学用語、ひきこもりは分野の所属があいまい


ひきこもりは「プライドは高いが自信がない」


ひきこもる本人は、しばしば強い自責の念を持っているが、親はわが子がそんなことを考えているとはなかなか気づかない。親は、このままずっと怠けて、親のすねをかじって暮らしていくのではないか、と考えて、お互いに怒りをぶつけ合う事態が生じる。


悪い親が前面に出ているときは、本人も悪い自己を出して対抗する。「生んでくれと頼んだ覚えはない」「こんなふうに育てやがって」


正論を言う親が本人にとっては悪い親。正しさを生み出しても治療的発展は起きない。


「叱咤激励」「しつけ」ではなく、親の行動も制約する「ルール」を決めるべき。「ルール」はお互いに「交渉」して決める。


社会を受け入れられていない人の欲望は、方向性を失った、混乱したものになりやすい。さもなければ「なんの欲望もない」という思い込みになってしまう。


やりたいことはやらせてみる。リスクがあって失敗しそうなことでも、本人が自発的に始めたことは長続きすることが多い。


お金があることだけでは、本人の不安感はあまり軽減しない。むしろ、自尊心をどうすれば回復できるかという問題と直面していて、お金だけでは到底解決できない。








著者は、コフートラカン、クライン、ビオンの精神分析理論を組み合わせながら治療を行っているそうです。私はここに挙げられた精神分析学者を1人も知りません。



本の中で、精神分析学者の理論はいいとこ取りして使えばいい、と書いてあります。



すでにこの本が、いいとこ取りした理論になっているはずなので、ひきこもり治療を学ぶのであれば、先程の4人の理論ではなく、本書の著者の理論で十分だと思います。



序盤で本の内容に基づいた図を作りました。本の中では「ひきこもり」しか指摘されていませんでしたが、個人的に他の事象を埋めるなら(図2)

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図2.コミュニケーション能力と欲求不満耐性

だと思います。



最後に、本の中で最も印象に残った箇所を引用させていただきます。





ー 長くひきこもっている人の気持ちを理解しようと思ったら、あなた自身が最も孤独で、最も惨めだった時期のことをよく思い出してみるのです。そんな気持ちでいるときは、叱ったり励ましたりする言葉が、いかに心なく響くかが少しはわかるでしょう。 ー



「ひきこもりはなぜ「治る」のか」(ちくま文庫斎藤環