本書は、サザビーズジャパン前社長が、芸術の世界を解説する内容である。
本は初めに、最低落札価格約30億円ムンクの「叫び」のオークション風景から始まる。独特の緊張感の中、競りが始まり、値が上がっていく。最後にハンマーが振り下ろされ、落札が確定する。手数料を加えた最終落札価格は96億円だった。
私には、あまりにも金額が浮世離れしているので、全くイメージがわきませんでした。何やらすごいことが起こっているみたい、くらいの印象でした。96億円っていったい何なのでしょうか。
ググってみたら、
ABCマートの2016年3〜5月期の連結決算の純利益が、前年同期比22%増の96億円。
2015年度に佐賀県と県内20市町に寄せられた「ふるさと納税」の総額が、前年度5倍の96億6000万円。
2012年に完成した、那覇市役所庁舎の建設費96億円。
でした。
ムンクの「叫び」があれば、那覇市役所庁舎が建つことが分かりました。画像を見てもらえば分かりますが、那覇市役所庁舎はかなり大きな建物です。これは、すごいです。
ちなみに、半額の48億円でググってみたら、マンチェスターユナイテッドからレアル・マドリードに移籍した、デビッド・ベッカムの移籍金が48億円でした。
ムンクの「叫び」があれば、デビッド・ベッカムが2人手に入るようです。(どうでもいいか)
美術品の価格は、美術史の中での評価と需要バランスで決まるらしい。アートマーケットでは、数が少ないことに価値がある一方、ある程度の点数が世の中に出回らないと市場が形成されない。例えば、サルバドール・ダリやアンディ・ウォーホルは一万点以上、ピカソは二万点の作品があるらしく、あちこちに展示されることで認知度が上がり、ほしい人が増えて、初めてマーケットが形成される。
一人の作家でも、作成時期によって価格が変わる。書画や日本画の世界では、加齢を肯定的にとらえるが、独創性を重視する西洋美術では、マイナスの意味合いが強い。
美術品では、その作品が誰の手に渡って今に至るかという「来歴」も重要視される。ロックフェラーが1960年に1万ドル以下で購入した作品が、2007年に7300万ドルで落札された。これは、ロックフェラーと同じような歴史、栄光を共有したい心理が働き、価格に反映されたからだ。
日本人の作家では、2008年に村上隆のフィギュア「マイ・ロンサム・カウボーイ」が約16億円で落札され、当時、アジアの現代美術作家の最高額を記録した。他には、奈良美智、河原温、草間彌生らが、海外で高く評価され、1億円以上で落札されている。
村上隆氏と草間彌生氏は知っていましたが、奈良美智氏と河原温氏は初めて知りました。美術はまったく知識がないし、あまり興味もないので、記憶に情報が残っていませんでした。
でも、この本を読んで、多少は、美術に対する知識が増えたかと思います。
本では、オークションの裏話が結構書かれていました。美術品を売買するという、なかなか知ることのない、触れる機会のない世界を味わうことのできる本でした。
巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか【電子書籍】[ 石坂泰章 ]
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